「けどな…現実的に考えても無理だと思うぞ?」


「場所がないから?」


「まあそれも理由の1つだな。

やっぱり吹奏楽には勝てない」


うちの学校は吹奏楽がかなり強い。

全国大会の常連校だ。


だから、音楽室はもちろん、授業では使われていない古い別棟までもが

すべて、吹奏楽部に占領されている。



「それに顧問はどうする?」


「だから去年も言っただろ。

エトーがやってくれ、って」


「無理だよ。

俺だって顧問してる部活があるんだ」


「けどエトー、ドラムもベースもギターもできんだろ?

そしたらエトー以外に適任な顧問なんていねぇーじゃん」


何を言わそう、このエトー。

高校、大学時代をバンドにかけた生粋のロッカー。


そこそこ有名だったらしいが、

これじゃメシは食えないと解散したらしい。


今は月1でライブしてるとかしてないとか…



「それにメンバーは?

集まってんのか?」


「今…集めてるところだよ」


片っ端から声かけてな。



「で、見つかったのか?」


「………いや、まだ1人も。

けど…だけど!絶対見つける!」



学年200人いんだ。

絶対いるだろ、楽器やってるヤツ。


そいつを見つけるまで俺、絶対諦めない。