「禁煙でふたりなんですけど」 先生は、店員さんに声をかける。 「鴨川沿いのお席と、個室がありますがどちらにされますか?」 「う~ん。鴨川が見える方がいいですね」 本当に不思議なお店だった。 蝶ネクタイをした黒ベストの男性店員さんがいたかと思えば、着物風の女性店員さんもいた。 奥の方を覗くと、個室は和室のようになっていた。 目を凝らさないと奥までよく見えないくらいの暗い店内。 「直、ちゃんとついてこいよ」 先生は、そっと手を差し伸べてくれる。 人差し指だけを絡めた。