レンズ越しのあい



先生の顔が、あたしの顔の真横にある。

近い、恥ずかしい、怖い、苦しい、心臓が……壊れそうなくらいに暴れてる。

一秒がすごく、長く感じる。


視線を感じて、甘い痺れが、じわじわと体を走り抜ける。

まるで自分の体じゃないような感覚に、戸惑う。


もう、や、やめて、壊れちゃいそう、耐えられない!






そう思って目をギュッと瞑った瞬間、体がふんわりと包み込まれた。

温かい体温があたしを包み込む。


「わりぃ、怖かったか?」


……優しい、先生の声。

いきなり現実世界に戻されたみたいに、今までの気持ちがサッと消えた。


い、今のは、なんだったんだろう。


それでも心臓だけは、変わらず速い。

先生に抱きしめられている。

その腕の中に、閉じ込められている。


……あぁ、安心する。


あたしも、先生の腕に自分の腕をからませた。


「……七海?」

「違う、ちょっと、驚いただけ」

「なな……」


首に当たる、先生の吐息。

腕の強さ、体温。

全身で先生を感じているみたい。