レンズ越しのあい



その、今の世界の柏原くんは、もういない。

遠くへ行ってしまったみたい。


それが少し、寂しくて……。


「……後ろ姿だし、誰だかわからないよね……?」


その写真を保護して、桜の木へとレンズを向けた。


桜を撮って、ハクレン、モクレンを撮って、ポプラを撮って……今日は基本的に『木』を撮った。

わからない種類も、あとで調べてみよう。


すぐに時間になり、柏原くんと待ち合わせた場所へ向かうと、彼はすでにそこにいた。


「行くよ」

「う、うん!!」


……今日の会話は、こんなのばかりだった。

もう少し話してみたいけど……やっぱり勇気が出なかった。