出がけに仕上げたばかりの化粧を トイレで直した私は ドキドキしながら フロアに入った。


ドキンッ。

居たっ!

佐々木さんの姿が 目に入った瞬間。

自分でも 驚く程
ドキッ とした。

鼻の頭が 汗ばむのが分かる。


あぁ。
こんなんじゃ、また 化粧直し しなくちゃだぁ~。

落ち着け 亜子 !

何 赤くなってんだ?

付き合ってる訳じゃあるまいし…。
意識しすぎだ。

その瞬間。
佐々木さんが こちらを見た。

ドキンッ!

私が 完全にフリーズした時、

「おぉ。ミスチル よかったみたいだな」
と、手をあげながら 大声で 言った 佐々木さん。

「あっ。は、はい。」

あまりにも堂々としている佐々木さんの姿に 拍子抜けした私は、
なぜか 小さく 裏切られた気がした。

そうだよね。
別に私達は、やましい関係じゃないものね。
なんだか 負けた気がして、
少し 悔しかったから、
私もすぐに 大声で 言った。

「ミスチルのパンフレット買ってきましたから、今度 持ってきますね。」

と…。