薫の細い、小さい声がした。




「お姉ちゃんの心を、自由にしたくてさ?」





門に寄りかかり


下を向き。


風になびき、顔にかかる髪を払おうともせず。


その上――…


額に手をあて


顔を隠す。







「大事にしなよ?」




聞き取れないほど、小さいその声に。


綾瀬涼は。



「バーカ。
おまえに、言われるまでもねぇよ」


薫の頭に手を乗せ、優しく撫で。




「サンキュ・・」


ふわっと薫を抱きしめ、そして言った。



「オレのかわいい弟の。
綾瀬薫くん?」