そして、あたしを抱き上げた。




「着替えに行こう」



「へ?」




そして、立ちすくむ薫に、綾瀬涼は呟いた。






「父親を恨んでいるのなら、おまえが一人の女を一生かけて愛してやればいいだろ?
オレはやってやるよ」




「バッカみたい。
涼兄・・・可憐さんがいるじゃん。
フィアンセいるくせに、何言ってんだよ」



「うるせぇ。
何とかしてやるよ。
いろいろなことから目を背けるのも、もう終わりだ」






あたしを抱き上げた綾瀬涼が、薫の横を通っても。



薫は下を向いたままで。



あたしを追ってこなかった。