ティーン・ザ・ロック




そんな事にも気づかない彼女は、『聞いて欲しい事いっぱいあんだよねー』と、自分の事に夢中だった。


『てかさ、要さんからあたしの話聞いた?』



「…うん、一杯話してたよ」


『ホントー!!?マジ!?

じゃあ、もう脈ありじゃんー!!葉瑠もそう思うでしょー???』



「えっと、どうかな……」



電話の向こうで浮かれている様子の留美。でも、あたしに兄の話を聞く前に、言わなきゃならない事があるんじゃないの…?


勿論気付いてないわけじゃないけど、留美の口から聞いたわけじゃない。


何故か彼女はあたしが気持ちを知っているという前提で話を進めているが、それは大きな間違いだ。



あたしは、留美が兄を好きだと 聞いていない。



「留美、うちのお兄ちゃんの事 好きだったんだ?」



出来るだけ驚いた声で尋ねてみる。ただ、“ゴメン”の一言が聞きたかった。


“親友なのに言ってなかったね、ごめんね”と。



だけど、彼女にはそんな事は どうでも良いらしい。



『えー?言ってなかったっけー!?他のみんなは知ってるから葉瑠も知ってるもんだと思ってた。マジ、あたしの要さんへの愛は廻りじゃ有名だったからさっ』



ゴメン の一言も無く。


『それよりさー』と、また自分の話に持っていくんだ。



昔から留美はこういう女だった。




自分の話が中心で当たり前。


自分に注目して当たり前。


男ならまだしも、他の女の話なんてどうでも良い。


あんたらはただあたしの話を聞いて誉めちぎってればいいのよ。



どれだけ自分に自信があるかは知らないが、どんな美人でも、そんな性格は男相手でなくては魅力にならない。


女の子の中では倦厭される素材でしかない事に気づいていなかった。