ティーン・ザ・ロック





出ようか出まいか。2秒程悩んで、スルーする勇気も無いあたしは、結局通話ボタンを押していた。



「もしもし」


『もしもし葉瑠ーー!?
留美だけどーッ!メール冷たくない?』



……出なきゃよかった。


受話器を少し離さなければ鼓膜が破れていたかもしれない。留美の声は、スピーカーにした時以上の大きさだった。



『ねぇ、聞いてるー?』


「聞いてるよー。…ゴメンゴメン、今からお風呂に入ろうとしてたからさ。

あたしが入らないと後が支えて迷惑かけちゃうから…」


嘘だが、我ながらいい言い訳だと思った。これならメールの件でも謝ってる事になるし、電話も切れる口実になった。


だが、そんな事では留美はくじけなかった。


『えーっ良いじゃん、お風呂なんてさ。それにまだ9時じゃん!!

それより親友を優先しなよー!!』



「…ははは」



…あたしの立場を理解しているのだろうか。


ここは自分の家でもホテルでも無い。好意で養って貰っている立場のあたしに、これ以上迷惑をかけろと脅しているのだろうか?


これが嘘でなかったら、本当に迷惑をかけていただろう。


「えっと、じゃあ、ちょっとだけね。叔父さん、気をつかってあたしがお風呂からあがるまでは、絶対入らない人だから」


これは本当だった。叔父さんは『若い女の子はオジサンの後のお風呂なんかに浸かれるわけがないだろう』と言って、
次の日の出勤が早い時間でも、必ずあたしの後に済ませてくれる。



今日は叔父さんが、明日の朝に入るからと言って寝てしまったから良いものの…。



それでも、あまり遅い時間に五月蠅くするわけにはいかない。


あたしにはあたしの生活リズムがあるんだって事、分かってくれても良いのに。