すると、彼は目がこぼれ落ちそうな程見開いて『マジ!』と驚いて見せる。
…いや、驚くような事を言った覚えは無いんだけど…。
そして、次に放った彼の一言で、今度はあたしが目玉を取りこぼしそうになってしまった。
「やっぱり彼氏いるの!?」
「は?」
あたしがいつ彼氏に迎えに来てもらうと言ったのだ。
とんでもない勘違い発言にただただ驚いていると
教室に残っていた男子生徒が、巧実君の大声に反応し、騒ぎながらこっちに向かってくる。
「マジ!?逢坂さーん!!」
「唯一のオアシスだと思ってたのに…!!」
ちょ、待て。彼氏がどうのという勘違いの前に、オアシス発言を撤回して頂けないだろうか。
何と弁解すれば良いのかと戸惑っている間に、巧実君が勝手に話を終わらせにかかった。
「ま、そう言う訳だから。お前ら諦めろ」
「ガッテム…!!!」
この落ち込み様と巧実君の発言…。まさかあたし、狙われていたのだろうか。
……いや、それよりも今は勘違いを正さなくては。
「ちょっと、待って!あたし彼氏なんか居ないよ」
叫ぶように訂正すると急に静まり返り、沢山の点の様な目があたしに向けられる。
「じゃあ、電話の相手と迎えに来るって人は誰なの?」
巧実君が冷静に問う。
「……兄だけど」
負けじと冷静に答えて見せた。


