そう思っても、車は全然進んでくれない。二分前に見た看板が、振り返ればまだすぐそこにあった。


1時間程かけて家にやっとたどり着いた。もう、二度と兄の車には乗りたくない…!!


インターフォンを押すと、留美が笑顔で出迎えてくれた。



「いらっしゃい。大変だったねー!」



「マジで、色んな意味で死ぬかと思った。ね」


「僕は…酔った……」



「あっはっは…!!要の運転は、慎重な割に荒い運転だから、あたしは出来るだけ乗らない様にしてるんだよねー」



「それ正解」


「…ハワイ旅行ご招待!」



玄関先で笑い合っていると、兄が唇をわなわなと震わせて何かを堪え、そして。




「お前らデコピンの刑じゃ!!」



「ギャ―――――!!」



熊の如く襲いかかって来る。



「痛い痛い!!」



「一瞬で終わらせてやるよ…!」



「…ちょ!やめ…」




悠馬が最初の犠牲者の様だ。その隙にあたし達は逃げ出し、何事も無かったかのようにリビングへと向かう。


「…愛(マナ)ちゃんは?」



「リビングで遊んでるよー。新聞紙を破くのがブームらしいの」



そう言われると、ビリビリと紙の割ける音が聞こえてくる。