家の前に優さんが送ってくれた直後から、彼の表情に笑顔というものは一切見られなくなった。
多分、そのせいだ。
悠馬は緊張している。……ううん、あたしもだ。
「悠馬」
「……ん?」
「…大丈夫だよ」
「……うん」
大丈夫、きっと。
そう自分に言い聞かせでもしなければ、あたし達は立ってすら居られなかった。
大きな扉が、そこにも立っていたボディーガードによって開けられる。
その向こうが視界に入り、思わず目を見開いてしまう。
外観も内装も、スタイリッシュな感じの印象だ。出迎えてくれた螺旋階段も、貴族というよりはオシャレなショップの様なものが真っ先にイメージされる。
それでもやっぱり置いてあるものは高級感が漂っていて…。
「…この花瓶なんて、壊したらきっと一生かかっても払い切れないだろうな」
うっかりと口に出してしまっていた。
くだらない事なのに、悠馬は律儀に説明をしてくれる。
「……それは母がブランドにこだわる事なく、インテリアバランス的に選んだ物だから…どうだろう。でも、普通の花瓶よりは値は張るよね、きっと」
「あ…ははっ」
慌てて身体を、周りに何もない絨毯の上に運んだ。


