「そして……一歳だった君を、君の育ての父親…涼達に預けて、一泊二日で旅行に行くつもりだったんだそうだ。

…でもね。行きの車で彼等は…。

即死だった。崖から落ちて岸壁にぶつかってね。


そしてそのまま、君は養子に入ることになったんだよ。

要との愛称も良かったみたいでさ。


……なぁ、葉瑠ちゃん。


何を考えてるかは知らないが、君は望まれなかった子なんかじゃないからな?

幸一さん達は君の事を本当に大切に思っていた。だから、何の危険があるか分からない旅行に君を連れていかなかったんだよ。

それに、……涼達も、君を本当の子の様に育てたじゃないか。

君に真実を話さなかった事も、機会を見計らって居ただけなんだ。


だから、誰も恨むことなんてしないでくれよ」



恭介さんの言葉は、そこまでしか聞き取れなかった。


後は嗚咽ばかりが受話器から流れてきて。聞いているこっちまで辛くなる程だったから。



「大丈夫ですよ。私は誰も恨んだりなんかしませんから。

…ありがとう。教えてくれて」


短くそう言って、電話を切った。