一拍間をおいて、肺の奥まで息を吸い込んだ。
「あたし、両親が事故で死んでこっちに来たの。
今はお父さんのお兄さんのお家でお世話になってる。
凄くよくしてくれてるし、あたしの事、本当の娘の様に思ってくれてる。
それに、兄も。私の事を大事に思ってくれてるんだと思ってた。
でも、もう…そこには居られない。
あたし、両親の実の娘じゃなかった…。
養子だったの」
チラリと杉澤君を見ると、目がこぼれ落ちるんじゃないかって位に見開かれていたし
紅葉は眉をひそめて地面を見つめていた。
こんな事を何で今言うんだ、って思ってる事だけはみんな一緒だろうけど。
自虐気味に笑ってから、話を再開した。
「…笑っちゃうよね。最初に兄とあたしのどちらかが養子だって分かった時
真っ先に兄の方だと思ったのに。
ホントは、あたしだったなんてさ。…笑うしか、無いよ。
……みんなが校門で見たって言う男の人は、あたしの兄と、叔父さんの息子さん。
だからさ、恋人とかそう言うんじゃないんだけど…。もう、みんなには何言っても無駄だと思うから。紅葉には取り合えず言い訳だけでもって思って……。
…黙って聞いてくれてありがと。
さっき…養子の事。言いたいならみんなに言っても良いからね。あたしの事、まだ嫌いでしょう?
でも
杉澤君の事は言わないでほしい。
……我がままだけど、交換条件って感じ?……それも図々しいか」
頬をポリポリと掻いて笑ってみせると、杉澤君があたしの目の前に立って…
「……強いね、逢坂さんは」
そう言って頭を撫でてくれた。


