沢山泣いて、声まで上げたせいか 喉が少し乾いた気がする。
「うん、でも一緒に行こうよ。
お兄ちゃんに頼むと、いっつも違うの買ってくるんだから」
「あー?そんな事あったっけ?」
「…紙パックの桃ジュースって言ったら、缶のメロンジュース買ってくるし。
月刊の少女漫画って言ったら、週間の少年漫画買ってくるんだもん。
もうお兄ちゃんには任せらんないよ」
いつもそうだった。
頼んだものとは真逆の物ばかり選んで持ってくる。
わざとやってるんじゃないかと疑った事もあったが、どう見ても兄は真面目だった。
至って真面目な顔で
『コレって言ってたじゃん!!』
と逆切れまでされる始末で。
中学に入ってからは、兄に頼まず自分で買い物をする事に決めたんだった。
「昔の話だろー?あん時は、あんまり話聞かずに、ニュアンスだけで選んで来てたんだよ。
…悪かったな」
兄は、そっぽを向いて 少し拗ねたように、制服のポケットに手を突っ込んだ。
「…いいよ、もう。お兄ちゃんの言う通り、昔の話だもん。
でも、ちょっと気分転換になるかなーって思うから。
だから、一緒に行こうよ」
ねっ? と小首をかしげて見ると、兄は直ぐに機嫌を戻した。
兄が拗ねた時はコレに限る。
「しょーがねぇなあ。お前は要お兄ちゃんが居ないと何にも出来ないのかぁ?」
「…はいはいっ。そうですよー。
葉瑠ちゃんは、おにいたんが居ないと生きていけないんですよッと」
「お前なぁー…。まあ、良いか」
少しふざけて言ってみたが、本当にあたしは、兄が居ないと何にも出来ないに等しいと思う。


