「あ、スタンプってここだね」
一つ目のスタンプは、小さな池の前にある、古い鏡の横に置いてあった。
きっとこの辺で祀ってある御神体なのだろう。
「じゃあ、押しちゃうよ」
持っていたスタンプ用のカードに一つ目のスタンプを押そうと手を伸ばした時。
「あっ!私が押したいッ」
紅葉がわざとらしくあたしを突き飛ばし、手に持っていたカードを奪い取った。
それで済めば良かったんだけど…。
「うわっ…!」
池の側だけあって、足元の土は水を含んで緩くなっている。
突き飛ばされた衝撃で足が滑り、落ちる と思った瞬間に
あたしはもう水の中に居た。
四つん這いになる形で、浅い池に浸かったまま動けない。
頭が今の状況に付いて行かなかった。
「逢坂さん!!大丈夫!?」
「巧実君……。うん、怪我はしてない」
腕を取って水の中から引っ張り出してくれた。
怪我はしてないけれど、せっかくの制服が台無しだ…。
「は…葉瑠…。ごめ…なさ…!!」
「紅葉…」
「紅葉…そんなつもりじゃ…。ただ、ちょっとふざけてぶつかっただけだったの…。
でもこんな事になるなんて…!
ごめんなさい…っ…ごめ…」
紅葉は泣き出してしまった。
泣きたいのはこっちだって言うのに。


