だけど、巧実君は彼女を迷惑そうに押しやって、あたしの所にやってくる。
「…俺あーいうの苦手」
彼女に聞こえない様に伝えてくるその表情は、もうげっそりしていた。
巧実君に拒否され、少し頬を膨らませていた彼女だったが、
今度は糸田君に上目づかいをしている。
紅葉…何やってんの。
あんなの彼女らしくも無い。
「ねぇ、糸田君。私の事…どう思う?」
いつもより高い声で。
「可愛いと…思ってくれてる?」
誰にでも媚びるような目つきで。
あたしの知る彼女は、そんな女じゃなかった筈なのに。
確かに、自己顕示欲の塊みたいなところは前からあったけれど。
…こんな、ぶりっこしている紅葉は、紅葉じゃないよ。
「えっと…そりゃー夏目さんは…可愛いよ…?」
「ほんと…?ありがとぉ…!」
可愛いと言わせて、いつもの様に満足そうに笑ってはいるけれど
普段の表情よりも硬く見えてしまう。
どこか、無理をしている様にしか思えないんだ。


