「ちょっと…話しておかなきゃならない事があるんだ」


眉間にしわを作って悲しげな瞳で。



これからするのは、笑える話なんかではない事に気付き、自然に顔が強張る。


一瞬の躊躇いの後に雪さんが打ち明けてくれた事は、


杉澤君の、まだほんの一部分の事でしかなかった。



でも



彼の心の痛みを汲みとるには、十分すぎる程辛いものだったんだ。






「彼の傷、最近の物だけじゃなく、古い傷跡があったよ。


それも深くて、刃物か何かで刺した様な傷と大きな火傷の跡が。


刺し傷の方は治り具合から見て…少なくとも10年は経ってると思う。


もしかしたら事故かもしれないし、勘違いかもしれないけど…


同じ個所に、重なる様にして付くなんて。





彼はもしかして






虐待されてるんじゃない……?」











あたしはまだ




彼の事を何も知らない。