ティーン・ザ・ロック






「おはよー」



紅葉が、冬華と奈津と一緒に登校してきた様だ。

それを確認した巧実君は『俺、女の騒がしいのは苦手だから』なんて毒づいて、自分は男子の集団の方に歩いて行ってしまった。


その後ろ姿を見送っていると、クラスの女子たちの明るい声が教室のあちこちから聞こえて来た。

「おはよー紅葉ー!」



あたしの時とはまるで違う、その歓迎っぷりに眉をひそめる。


金曜までは確かに挨拶を返してくれていた筈なのに。



急に変わってしまったあたしは受け入れたくないとでも言うのだろうか…?




だが、その悩みも、紅葉達の明るい声で吹き飛んで行った。



「あれーー!?葉瑠!?

何か超ギャルになってない?」


「髪、色入れたんだー!!似合ってるよっ」



「ホントだ!ピアスまで開けてるよ、この子!!

すっかり垢ぬけたね!」



あたしを発見するなり、鞄も手に持ったまま側に来てくれる彼女たちに救われた。



クラスの女子が何を思ってたって良い。



あたしには、彼女たちが。…何よりも紅葉が傍に居てくれるのだ。



「似合ってるかな…?」


「めっちゃ可愛いよー!!

紅葉と一緒に読モやって欲しい位ッ」



お世辞でも、こんな風に言ってくれる人がいる。


今は上辺だけの関係でも、きっといつか、あたしを必要としてくれる筈。


それだけが今のあたしの存在意義。生きる希望。



だから。


姿形、考え方、価値観。


その全てを彼女たちに合わせて見せよう。



たったそれだけで居場所が作れるのなら、今のあたしには容易い事だと思った。