いつもよりも遅い時間に学校に着き、教室の扉を開ける。
「おはよう」
小さく笑って挨拶をすると、クラスメイトの目線があたしに集まり、一瞬静まり返った。
…何かおかしいのだろうか。
髪色や少しばかりのメイクが似合わないのだろうか…?
「おはよー」
やっと誰かが口を開いたかと思えば、
挨拶を返してくるのは男子ばかりで、女子生徒は幾つかのグループを作り こそこそと何かを話しているようだった。
何か、ヤな感じだ。
眉をひそめて教室を横切り、自分の席に腰かける。
既に隣の席には巧実君が座って、幽霊でも見る様な目であたしを見つめていた。
「……巧実君、おはよ」
声をかけると、今度は口をだらしなく開け、あたしの頭から足の先までを一度見る。
何故かは分からないが、そこでやっといつもの調子に戻った様だった。
「あ、やっぱり逢坂か。何処のギャルが間違って入って来たのかと思った」
「……そんなに、変?」
「変って言うか、別人かと思った。
何っつーか…雰囲気も変わったしな」
「…そう?」
…他の人から見て変わったと思われるのなら、あたしのした事は無駄ではなかったという事だ。
素直に誉め言葉と受け取り、笑顔で『ありがとう』と言うと
巧実君は
「うん…」
と、複雑そうに笑った。


