タカヤは、A銀行K支店の裏にある車庫にカブを収納すると、のろのろと黒い営業カバンに手をかける。
カバンはずしりと重いけれど、成績になるような中身は、吹けば飛ぶようなくらいしか入ってない。
それでも、いつもより早いこの時間に帰って来たのは、今日中に融資の書類作成をしなければならないからだ。
それがなければもう少し外回りをするのだが。
田舎にある小さなこのK支店は少人数のため、営業だけやっていればいいというわけにはいかない。
しかし査定にはその辺りは含まれないため、営業成績だけを求められるたび、多大な不満を抱えていた。
──ちぇ。オレだって、支店に融資係さえいりゃあ……
そうは思っても、融資係がいて融資雑務を全て引き受けてくれたとして、
営業成績がめきめきと上がるかと訊かれたら、お茶を濁すことしか出来ないのは自分が一番良くわかっていた。