唇が離れると、ナツはただニッコリと笑った。


その優しい顔と、それに見合わないくらい大量のピアスがやけに切なくて。


どうしても想いが溢れて止まらなくて、初めて、私からナツに歩み寄り、ぎゅっと抱き着いた。


それは色っぽい恋人みたいな抱き着き方なんかじゃなくて、まるで父親に抱き着く子供のようだと思う。


ナツはそんな私を、そっと優しく包み込んでくれた。


ナツにとって私はどんな存在なんだろう。


なんでナツは私とひと夏限定の恋人をしようって言ったんだろう。


全部知りたいのに。ナツの思うこと、全部全部、満足するまで知りたい。


だけど、時間が足りない。足りないよ。


疑問は、青から橙に染まるその彼方へ飛んでは消え、飛んでは消え、波にゆらゆらと、ただ揺れる。