「……ん、そう」


耳元に、独特の掠れた声が響く。


「あ……そうじゃなくて」


ナツの指が、私の手の甲を這い、私を導く。


「ここをこう弾いて。……ん、上手だね」


ナツに言われるがままにすると、空間に広がる音。


「……はあ、なんかナツさんの囁きだけ聞いたら、ヤらしい展開にも聞こえるんスよねー。アダルティっス」


寮の一階、皆が食卓を囲むテーブルの席、私は初めて触る三線をナツに教わっている。


そして、今日の晩御飯の皿洗い当番を済ませたカズが、エプロンで手を拭いながらこちらを見て笑っていた。


カズはナツよりエプロンが似合わない。なんか、白い肌にナツのハイビスカス柄の派手なエプロンが馴染まなくて、ケンカしてるんだよね。