「……ひと夏?」


「そう。ひと夏。俺と冬花にはそれが一番合うと思うから。俺達は、進む道が今しか交わらないでしょう?だから。限定、なんて思うんだけど、ダメかな?」


少し霞んだ、夕立の匂いが広がるこの空間。


ナツの真っ直ぐ降り注ぐ視線が妙に説得力があって、なんだか納得してしまう。


そう考えると、その通り。


私はひと夏で帰り、そのまま就活の生活に戻る。


ナツは、きっとおじいちゃんになるまでここでゆったりと生活をしていく。


夏が過ぎてしまえば、私達はそれぞれの人生に戻るんだ。


元々、お父さんの気まぐれが無かったらナツに巡り会うことも、沖縄のゆったりした時間を知ることも、心臓が煩いくらいに高鳴ることも無かったんだ。