【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−

灼熱のアスファルトを越えて海辺に出ると、夏の終わりというのに太陽は照り付けてくるし、人は多い。


「夏休みも終わるから、今日明日は特別多いだろうなあ。ひと夏は、俺達以外にも終わりを告げてるんだね」


ナツはそんなことをのほほんと言うと、黒いケースから胡弓を出して調弦を始める。


「ここで弾くの?」


「うん。やっぱり室内より、外の方が俺的に楽しい。基本的に、うちなーんちゅはお祭り男ですから」


そういうとこ、ナツらしいな、と思いながら私はナツの指先を眺める。


「よーし。今から青柳夏紀、沖縄民謡アンド島唄リサイタルの始まりねっ!」


ナツは調弦を済ますと、ニッと笑ってピースをして見せた。