【完】“微熱”−ひと夏限定のセイシュン−

バイクで数分、海が見える海岸沿いの一角に『Spiel』は建っていた。


小さなクラブハウスで、中に入るとその小さな見た目とは真逆の大きな音が響いていて少しビックリする。


ライブハウスみたいな内装で、今目の前で演奏されてるのはテクノポップに沖縄の音楽がまぜこぜにされたようなもの。


「面白いだろ?これ、琉球テクノって言うんだってさ。こういうのも悪くないよな」


「初めて聞きました。へぇ」


隣で目を細めて笑うナツの唇のピアスがライトでキラリと光る。


まるで、ピアスそのものも笑ってるみたい。こんなに顔面にピアスだらけなのに、ピアスすら不自然に感じないナツの存在や、この空間。


このクラブハウスで、私が何を手伝えるんだろう。私、ファミレスでしかバイトしたことないのにな。