仕事から帰って、たまたま玄関で鉢合わせになってしまったみたい。 「…おかえり。」 ただいま、というのは何か違う気がしてオウム返しをする。 「遊びか?」 「うん。」 「そうやって誤魔化すのもう止めたらどうだ?」 見慣れたスーツ姿。 今じゃ、私服の姿を見る方が少ない。 若いのに多忙。 それは、あたしと一緒になる時点で暗示された運命だったのかもしれない。 「あ、2人とも──、」 「そうしなくちゃいけないの。」 寝室から出てきた葛さんが見えた。 でも構わずに続ける。