駅までの道はしっかりと覚えている。 でも上の空。 黒の絵の具水を零してしまった後のような、夜の美しい蝶達が羽ばたくような空色。 きっと、もう誠から連絡が来る事はない。 陸上の弱音も、全国レベルのそのタイムも、好きな音楽の話も。 1日の半分以上が、彼で埋まっていたのに。 「髪の毛、いつ染めたの?」 とか 「彼女って同じ学校の人?」 とか。 こうやって、後から冷静に考えれば話したいことが沢山あった。