マンションに着いてチャイムを鳴らせば翔が目を丸くして、出てきた。 「…仁菜…お前っ」 翔はお風呂上がりなのか、髪がまだ濡れている。 ポタリボタリと髪から滴る水滴は、床にいくつもの水溜まりを作っていく。 『……』 そんな翔に私は何も言えなくて、ただ抱きついた。 この恐怖心を取り除きたくて… 翔は取りあえず中に入れと、背中を押してくれたのだけれど。 そんな翔にまでビクついてしまう自分が嫌だった。