「ゆ~り~ちゃん!」

私は非常に低血圧で、朝はかなり弱い。

そんな機嫌の悪い時に、こいつは何故こんなハイテンションなんだ?


「え~シカト?
おはよう」

「うん」

口で言う割には、嫌がっていないことに、私は最近気付きだしていた。


田上は女子に関して軽く、でもバスケにはプライドが高く、私の苦手分野に属していた。

だけど、人には良い所もある。

悪いところ以上に、良い所を見てきたのだ、多分。


「じゃあ、朝の1本行こうか」


あの日、私が田上にバスケで勝ってから、毎日朝は1対1をしている。

いきなり頭を下げられ、朝は苦手な私だが、やむ負えなく承諾したのだ。

しかし、もう3か月くらいたった今、この日課は私にとって、とても大事な時間になっていた。


朝から汗を流すのも悪くない、と密かに思っている。


1本とったらディフェンス、1本とられたらオフェンスを繰り返し、何度も何度もゴールを目指した。

大体30分くらいだろうか、コートを駆け抜け、そして大の字に寝転がる。


その日のプレー1つ1つを振り返り、バスケについて熱く語るのだ。


「今日もありがと」

「別に」

冷たいと思う人が大半だが、田上はちゃんと私の性格を理解して、これが私だと分かっているのだろう。


「あのさ、百合ちゃん。
やっぱり、バスケ部入ったらどうかな?」

「もういいだろう、その話は」

「ほら6月で、3年引退だし。
それに百合ちゃんがいれば、だいぶまともなチームになるよ」

必死になって言う田上に、少し笑いそうになるが、堪える。


「私が入ったら、誰がスタメンから落ちるか分かってるのか?」