私は今、とてつもなく、後悔している。
何故、聞いてしまったのだろう、と。
聞かなければ、ずっと変わらない日常が、待っていたかもしれないのに。
「百合。
俺さ・・・・・・」
桜が何かを言おうとしたので、私は急いで遮った。
「ねえ、それを聞いたら何か変わるかな?」
少し目を丸くした桜は、優しく言った。
「人間は一番、変わらないものを求めている。
結局、良くも悪くも、変わってしまうくらいなら、今がいいんだ。
上を目指していない人間は、きっと皆、現状に甘えている」
まるで自分に言い聞かせるようにも、見えた。
「変わっちゃうんだね。
嫌だって言っても、だめなの?」
桜は困った顔をした。
ああ、聞きたくないな。
何となく、自分の中で桜がなんて言うのか、テレパシーのように伝わってきた。
「ごめん。
受け止めるよ、現実を。
そのかわり、一つだけ約束して?
絶対にいきなり消えないって」
じっと見つめる君の瞳を、私は逃さない。
「大丈夫。
百合にはもう、隠し事はしないよ」
こんな時まで無表情な桜を見て、私は不思議と泣きそうになる。
いつかは来ると思っていた。
永遠など、この世に存在しない。
始まりがある限り、終わりはつきものだ。
私は感じた。
終わりが近付いている、音を。
だけど、私は聞こえないフリをした。
やはり、私は現状に甘えているのか。