「田上ねえ。
デマだよ、デマ」

嫌悪感を漂わせているが、何となく嫌いというわけでもなさそうだ。

嫌い嫌いも好きのうち、ってやつだろうか。


「でも、浅川が男子と噂になるなんて、珍しいな。
ことごとく、告白の返事はノーだし、噂なんてなったことないのに」


浅川は本当に玲菜と逆だ。

玲菜以上に告白されているはずなのに、全てフっている。

他中、年齢問わず、いろんな人に思いを伝えられ、本当に忙しい人だと思う。

時々ふと、いない、と思うと大抵は全て告白タイムなのである。

まあ、確かにかなりの美女だと思うが。


「あいつは、悪い人ではないんだけど。
でも、私には好きな人がいるから」

あいつ、と浅川が言うと、普段の5割増しくらいで親しい感じがして、友達として少し嫉妬した。

好きとかの嫉妬ではない。

友情関係のだ。

一応異性の1番の友人は、俺だろうと思っている。


「桜のこと、本当に好きなんだな」

「うん、まあ。
自分でも少し驚いている」

「あんな変わり者、何で好きになったんだ?」

ずっと聞いてみたかった質問だ。

タイミングがなかなか合わなかったこともあって、今更という感じになったが。


「何ででしょうね?
源は?源は何で玲菜のこと好きになったの?」

あくまで教える気のない浅川に、少し呆れながらも、玲菜を意識し出した日のことを思い出す。


「最初は、どちらかと言えば、嫌いだったんだ。
桜の自己紹介の時とかさ、軽そうな女だなーって」

確かに玲菜は、初対面では軽いと思われることが多い。

声が高く、言葉も間延びしていたり、見た目も長髪を結ぼうとはせず、校則はほとんど無視だ。

もちろん、清純派とは程遠い。