一応、というところが、また浅川らしい。


「じゃあ、帰りは別々でいいか」

「いや、無理」

瞬時の即答に、戸惑う。

何で、と若干ビビりながらも聞くと、少し焦っている顔をした。


「何か告白みたいじゃない。
それに、ただでさえ手作りだし重いとか、思われたくないのに」


手作りなんだ、と俺は小さく言った。

すると、浅川は言う気がなかった言葉を言ってしまい、少し動揺していた。


「重くねえと思うぜ。
男は誰でも、手作りとか憧れるしな。
それに、あいつには重いとか分かんねえって」

「なるほど。
源、頭いい」


浅川に言われてもなあ、と思う。

俺はこれまで1度も、浅川と桜のテストの点数を上回ったことはない。

死ぬほど頑張った時もあったが、やはり2人を上回ることはなく、今では上回ろうという気さえもない。

向上心がない、と思うだろうが、追いつけないものは追いつけないのである。

だから、今は俺なりのそれなりで頑張っている。


「でさ、浅川告る気ないのか?」

「ないに決まってるわよ。
桜には恋愛感情がないんだから」

桜と浅川の話には、いつも恋愛感情など一般的ではないものが入ってきて、普通の恋愛のようにうまくいかないんだ?

答えは簡単だ。

浅川が好きになった相手が、ワケありの面倒くさい男だから。


だからといって、嫌いになれとは言えないし、もちろん他を探せなんて、もっと無理だ。


「そう言えば、最近田上だっけ?
そんな奴とデキてるとか、噂で聞いたんだけど」

少し前に聞いた噂だ。

いくらでもこの話をする機会はあったのだが、最近帰りはあまり一緒にいない。

桜も野球部の助っ人に結構頻繁に行っているようだし、浅川もバスケ部に行っているみたいだ。

6月で先輩が引退したら、正式に入部するとも言っていた。