今のままじゃだめか、と言うと美雪は口ごもった。


「試合のときは先輩とかいるから、川さん、来ないでしょ?
正式に入部すれば、保険も入れるし、けがの心配もなくなる。
それに、試合にもフルで出られるようになるんだよ」


確かに私が出席するのは、練習や、せめて練習試合で、公式な試合には出たことがない。

私はあくまで助っ人なのだ。

いい練習相手とでも、言っとこう。


「いや、私は・・・・・・」

その言葉を遮り、後ろから声がした。


「いいじゃん、入れば。
百合ちゃん、うまいんだし」

美雪が、健人・・・・・・と呟く。


「そういう問題じゃない」

「入ればいいじゃん。
つか、試合でないのに、練習してても意味ないでしょ?」


「健人、やめてよ。
せっかく、川さんが来てくれてるのに」


「だって、そうだろ。
俺達が一生懸命辛い練習も頑張ってるのは、試合に出て、勝つためだろ?
中には、勝利のためじゃない奴もいるかもしれないけど。
でも、少なくとも俺は、勝ちたいと思うよ」


田上の言う通りだ。

練習だけしてたって結局は意味がない。

助っ人なら、試合に出て、チームに貢献して、勝利をつかまなければいけない。


「じゃあさ、俺と勝負しようよ。
俺が負けたら、百合ちゃんの思う通りでいればいいよ。
だけど、もし俺が勝ったら、バスケ部に入ってよ」


黙っている私に、田上は挑戦状を出した。

隣で美雪が、健人これでも次期キャプテンなんですよ、とまるで勝負を断るように懇願している。

でも、よくよく考えると、美雪は田上を応援するべきなのでは、と思う。

もしかしたら、美雪は本当はバスケ部に入ってほしくないのかもしれない。


「いいよ」


バスケの女神に全てを託すことにした。

美雪は祈るように私を見つめ、田上は自信に溢れた目で誇らしげに笑っていた。

何やら面白いことが起こりそうだ、と周りにも分かったのか、人が続々と集まってきた。

人が多いのは嫌いだ。

ギャラリーも野次馬も、困ったものだ。