「今日で最後なんて、寂しいなあ。
もっと玲菜ちゃんと仲良くなりたかったー」

「ねー。まだまだ足りないよ。
玲菜ちゃん、そろそろ優人と別れるんだよね?」

優しい口調から始まる、脅し。


「いえ。
優人があたしを嫌いになるか、あたしが優人を嫌いにならない限り、別れるつもりはありません」

嘘はつきたくない。

同じ部類には入りたくないからだ。


「調子乗るのもいい加減にしろよ。
あんた、少し可愛いから付き合って貰ってるだけって分かれよ」

女って怖いなあ、とふと思う。

男子がいる前と、大違いだ。


「人間、外見じゃないと思いますけど」

あたしが言い終わるのとほぼ同時に、一人に胸倉を掴まれ、壁に寄り掛かる態勢になった。


「お前、マジ死ねよ。
つか、殺すよ?」

死ねとか、殺すとか、何でそんな簡単に言えるんだろう。

それがたとえ冗談だったとしても、許されるはずのない言葉のはずなのに。


「あれ?何してるの?」

ドアをあける音と同時に聞こえる声。

優人だ、と不意に口から洩れる。

先輩方は驚いた顔をして、胸倉を掴んでいた手を急いで離した。


「え?練習だけど」

平静を装い、一人が言った。

「もう、そろそろ終わりにしなよ。
前日だし、明日に備えなきゃ」

「うん、じゃあ終わるー」

皆が帰りの支度を始める。

慌ただしく動く人の中で、優人が耳打ちで、一緒に帰ろうと言ってきた。

笑顔で、うんと答え、帰り支度を瞬時に済ませ、部屋を出た。


「先輩方、さようなら。
明日は頑張りましょうね」

満面の笑み。

少し嫌味っぽいかな、と思いながらも、仕返しは半分にもみたっていない。