「好きですよ。
多分、優人さん以上に。
文化祭、楽しみにしててくださいよ」
言い逃げは桜みたいだから、一応次の言葉を待った。
「うん。君の勇姿、楽しみにしてる」
大人なのか、余裕があるのか、馬鹿にしてるのか、何とも言えない返答だ。
まあ、どれにしても、玲菜から好かれてる自信はあるんだろうな。
にこっと微笑むと、優人さんは走って行った。
格好つけてみたものの、さてどうしようか。
玲菜を一番傷つけずに、俺の気持ちを分からせる方法なんてあるのか?
ぶつぶつ言いながら、歩いてると、浅川の声が聞こえた。
隣にいるのは、田上じゃないか。
隣のクラスの女たらしで有名な男だ。
まあ、簡単に言うと、浅川とは似ても似つかない奴だ。
距離が遠いため、会話は断片的にしか聞こえない。
それにしても、田上の声は大きい。
それに反して、浅川は冷たく小さく言い放つ。
間にいるのは同じクラスの一ノ瀬か。
・・・・・・ふうん、なるほど。
彼女は田上が好きなのか。
「いや、またね。百合ちゃん」
田上の陽気で呑気な声が廊下に響く。
百合ちゃん?
初対面で、名前にちゃん付けか。
これは、桜が聞いたら怒るだろうな。
何せ、浅川を名前で呼ぶのは、桜だけなのだから。
できたら、嫉妬という感情が生まれてほしいものだ、全く。
そんなことを内心で思いながら、俺は文化祭の構想を練る。
優人さんねえ。
今までの玲菜の彼氏の中では、軍を抜いてトップだな。
まあ、とりあえず、愛だけは負けない。