あまりにも桜が真剣なので、私は去年の4月から、つまり出会いから今までの出来事を振り返ってみた。

本当に、トラブルメーカーだな。

私はどちらかと言えば、優等生なのに。


「頑固。屁理屈。言い訳。変人。謎」

とりあえず、思った事を口にした。

言ってから、少し失礼かな、と考える。

だが、桜はいたって普通だった。


「へえ~。そうなのか。
ちなみに俺が思う百合を言ってあげようか?」

桜が気持ち悪いくらいに気前がいいので、私の言葉が悪い意味だと分かっていないのか、不安になる。

「え、じゃあ、どうぞ」

「クール。あんまり話さない。
言わないだけで、自分の考えは持ってる。
美人。モテる。可愛い系と言うより、綺麗系」

美人って性格じゃないよ、と思わずつっこみをいれてしまう。

「だけど、容姿も才能だと思うよ、俺は。
結局、ここは外見重視じゃないか」

ここ・・・・・・?

不思議に思いながらも、桜の言うことは大抵変なので、特に気にしない。


「桜は、黙ってれば、格好いいよ」

「黙ってればって、失礼だな。
俺はいつだって、格好いいさ」

「ナルシスト。
そういう所が、格好悪くしてる」

桜から声を奪えば、かなりの美少年なのに。

でも、まあ、顔が整っているから、気になったわけじゃない。

その声、というか存在感に惹かれたのだ。

だから、結局私は桜の変なところを好きになったわけだ。


「普通に成り下がるくらいなら、格好悪くなっても構わない」


そんなこと言えるのは顔がいいからだ、と外見があまり良くない人には罵られるだろう。

だけど、平然と言い切る桜は、やはり格好いい。

それは外見も含めた、内面重視の格好いいだが。


「そういうこと普通に言える桜は、凄いよ」

素直な感想を伝えた。

「信念は曲げない。
例えどんなことがあろうと。
自分の五感で感じた全てを、俺は受け止めたい」

まるで自分に言い聞かせるように言う桜は、どこか悲しげだった。