「ねえ、ゲン。あの二人、くっつかないかなー?」

川さんと桜が携帯小説について熱い討論をしていたので、あたしとゲンは遠くからそれを見ていたのだ。


「何だよ、いきなり」

「あたしは、桜にも川さんにもすごくお世話になったからさ。
出来る限りは協力したいよ」

こうやってゲンと付き合うことになったのも、桜のおかげだ。

だから、あたしはこれでも桜には感謝している。


「浅川はもう、いつ告白してもおかしくねえんだけどな」

「いやいや。あの人は自分から告白しないでしょ?」

「そうだな。でも、それじゃあ一生無理だぜ」


ゲンは鼻をすすった。

桜と川さんを見て、桜が普通だったらきっと全てうまくいくのに、と思う。


「桜さあ、本当に恋愛感情ないのかな?」

「俺は、あいつが嘘をついてるようには思えない」


同感だ。

桜の顔を見る限り、あれは本気だ。

でも、そんなこと現実に有り得るのだろうか。

恋愛感情がない、なんて人間に起こり得ることなのか。


「ねえゲン、あたしのこと好きになってくれて、ありがとう」

言った本人だが、思わず照れた。

もちろん、言われた方もだが。


「俺だって、今が奇跡みたいに思ってるよ」


ゲンの照れている姿を見ると、何故か笑いが込み上げてくる。

体つきがよく、ガキ大将のような人に、真っ赤な頬はミスマッチだからだろうか。


でも、あたしはそんなミスマッチは嫌いじゃない。

むしろ好きなのだ。