「ねえ、何か変じゃない?」
隣にいるゲンは、楽しそうに話す桜と川さんに視線を移した。
「確かに。何か、仲いいというか変な雰囲気だよな」
変というと、マイナス的な言葉に聞こえるだろうが、あたしとゲン的にはいい意味の方だった。
「あの二人って、どこか人と接するとき距離置くじゃん?
でも、今のあの二人の間には壁がない感じがする」
「なあ、玲菜は浅川の気持ちには気付いてるのか?」
今の話と特に関係のない、まあないわけでもないのだが、そんないきなりの質問にあたしは返答が遅れる。
「まあ、一応一年間は一緒にいるし、見てれば大体はね」
「相談とかは受けてないのか?」
ゲンは珍しく小さな声でこもり気味に言った。
不審に思いながらも答えた。
「一回もないなあ」
ゲンが顔を強張らせながら、考え事をしているようだった。
「本当はさ、俺と付き合ってくれたのは浅川のためなんじゃないのか?」
何て返答すればいいか分からず、あたしは黙ってしまう。
「そりゃあ、俺的には付き合っててほしいけどよ。
だけど、浅川たちは多分大丈夫だと思うぜ。最近いい感じだしな。
だから、もしも浅川たちのためなら別にいいぜ。
俺はやっぱりお互い好き同士で付き合いたいし」
ゲンの真剣な顔見るの久しぶりだな、としみじみする。
「ばーか。ゲン、あたしより頭いいのに馬鹿だなあ」
軽くゲンの肩を叩いた。
「俺は真剣なんだぞ」
あたしの両手をゲンは強く掴んだ。
ドラマの一場面みたいだ。
「ねえ、あたしたちもう付き合って一カ月だよ?
あたし一カ月も続いたの初めてだよ。嫌になったらすぐふっちゃうし。
だからさ、ゲンはあたしに好かれてるっていう自信もう少し持てば?」