思い出から我に返り、桜との会話に戻る。


「あの時の頼朝のアシストは良かった」

「確かに」

「俺はね、スーと言い合いすることに最近疲れた」

桜は言い終わると、溜息をついてみせた。


「まあ、根気はいるよね」

「スーほど、しつこい女はいないと思うよ」

「それ、玲菜が聞いたらまた激怒するね」


一瞬二人の間に笑いが漏れる。

笑いの後には沈黙がある。


私は迷う。

聞いて何かが変わることが怖い。

桜が遠くへ行ってしまうんじゃないかと思う。


「ねえ、桜」

「ん?」

歩むのをやめ、立ち止まる。

春風というのとは程遠い、冷たい風が吹く。



「あなたは、誰?」

桜は私の言葉に背を向ける。


「あなたは、一体、何者なの?」


五分ぐらいだろうか、それくらいたった後に桜は静かに言った。





「百合は俺のこと何でも分かるんだな」