玲菜は、何言ってるのよ、と言いながら桜を叩き、源は口では怒っているが、口元が緩んでいる。

玲菜の彼氏は、そんな光景に唖然している。

私はというと、最初は面白がって見ていたのだが、まあ一応玲菜と源の動きを止めに行ったのである。

桜の屁理屈を今日はもう聞きたくないからだ。


「あれ?健二は?」という玲菜の声で、彼がいなくなったことに気づく。

私が彼の立場でもそうしただろう、と内心で思う。


「まあ、ほら玲菜、あんな彼氏やめとけよ。弱そうだし」

源は嬉しそうな顔をしながら言った。

玲菜は不服そうだったが、その時携帯が鳴り、彼からのメールで瞬間的に顔つきが変わった。


「ねえ!これ見てよ!」

ん、なんだなんだ、とほほ笑みながら源が読み上げた。


「玲菜とはもう付き合えない。
人間は外見ではなく、内面だということに気付いた。
とりあえず、源とかいう奴と幸せになれよ」

「これさあ、まるであたしが性格悪いみたいなこと言ってない?」

頬を真っ赤にさせながら、玲菜は怒っていた。


「まあ、そういうことだろうね」

「それ以外、考えられねえだろ」

「案外あの彼氏も頭いいじゃないか」

桜はうんうんと頷きながら言った。


「それ、どういうことよ」

「いや、そのまんま受け取ってくれればいいのだが」

「あんたさ、そこは心の中ではそう思ってても口に出しちゃいけないものなの。
あたし、これでもフラれたのよ?ちょっとは慰めてくれてもいいんじゃないの」

「これだから、恋愛は嫌いなんだ。周りに迷惑をかえるくらいなら、しないでほしい」

玲菜の高い声と桜の冷静でその上、激怒させるような言葉で二人の言い合いは強まっていった。

どうにかしなくては、と私が思った時に口を開いたのは源だった。


「おい、桜。お前、ブランコはいいのかよ」