「今日、桜でも見に行くか」

桜と桜を見に行く、まるでダジャレのようだと思っている間に、桜は公園ヘの道にコースチェンジした。


「百合、俺はどうせ死ぬなら、桜に殺されたいんだ」

「どういうこと?」

「自然によって死にたいんだ。
人間のか弱い力に殺されるなんて、真っ平ごめんだからな。
大雪で屋根から雪が落ちてきたり、砂漠の中で水を求めて死にたいんだ」

桜は時々本当に遠い目をする。

なぜかそれを見るたびに、私は胸が痛くなっていた。


「桜に殺されたいって、どういうこと?」

「桜の木の下で眠るんだ。
そして散ってきた桜が俺の体にのって、そのまま息をすることを忘れて、眠っていくんだ」

公園に着いた私たちは、散っていく桜を見つめた。


桜の横顔を横目で見て思う。

ああ、あの時も、私は桜に恋をした。



「百合、怖いのは大丈夫なのか?」

中一の夏に、四人で行ったお化け屋敷での話だ。

お化け屋敷の中だというのに、私と桜は普通に会話をしていた。

「うん。
ねえ、桜は分かっていないのか、分かっていないふりをしているのか、どっちなの?」

桜はとぼけるような仕草をしたが、私の顔を見てやめた。


「俺はこれでも第三者の恋愛は得意なんだ」

「それは、分かってるって取っていいのよね?」

うんうん、と桜は頷いた。


「今日だって、本当は観覧車じゃなくて、源と玲菜をくっつけるためなんじゃないの?」

証拠もない、ただなんとなく思ったことだった。