「う~暑いっ!
桜、この借りは大きいからね!」

「私も同感」

「俺暑いの、苦手なんだよ」


まだ午前中だというのに、太陽はぎらぎらと光って、俺たちを見つめていた。

桜はやはり涼しい顔をして、ジーパンに七分袖の秋服と言ってもいい格好をしていた。


「まあ、ほら、今日は楽しもうじゃないか。
遊園地とは、意外とわくわくするものだな」


深呼吸をするように桜は背伸びをして、観覧車を見つめた。

まあ、玲菜の私服を初めて見れたことだし、今回のところは良しとしよう。


丁度、今から3か月前の8月前半の出来事だ。


「ねえねえ!!最初、何乗る??
やっぱり、お化け屋敷?それとも、メリーゴーランド?」

玲菜は口では悪く言うが、あの顔を見る限り遊園地には乗り気だった。


「どっちでもいい」

浅川はいつも通り、無関心だった。

「お化け屋敷は嫌だ」

「どうせ、あんた怖いのだめなんでしょ~?
男がそんなんでどうするのよ」


玲菜の挑発が始まる。

桜は負けず嫌いだ。

だから、お化け屋敷を怖がっているのか珍しく冷や汗をかいて、目が泳いで、だけど玲菜に言われっぱなしは嫌らしく、桜はうんうんと頷いている。

お化け屋敷の目の前まで来て、桜は一度は躊躇し踏みとどまったものの、先頭を歩いて行った。