「俺は思ったんだよ。
中庭の落ち葉を集めながら、こんなことをする必要はあるのか、って。
答えは、ノーだ。必要ないんだ。
じゃあ、なぜしろと教師が言うのか、そして俺は分かった。あいつらは、自然が怖いんだ」

屁理屈としか言いようがない桜の言い訳を、俺たちは何度聞いたことだろう、と思う。

夏休みもあっという間に過ぎ、気がつけばもう十月の半ば。

桜といると、特に時間が早く過ぎる気がする。


「あんたさ、かっこいいこと言ってるけど、もう少しあたし達のことも考えてよ」

確かに、と俺は声を漏らす。


こんな肌寒い風が吹く中で、中庭掃除をしているのは、100%桜のせいだ。




それは、かれこれ小一時間前のことだ。

「お前ら四人、授業後少し残れよ」

五限目の授業終了の挨拶の前に、あの理科教師は言った。

どうせ説教だろうな、桜余計なこと言わなきゃいいけど、と無意識に思う。


挨拶が終わると同時に、俺たちは先生のところに行った。

「今日の実験、少しでもやった奴、この四人の中にいるか?」

低く図太い声が理科室に響く。

桜は真正面から山田先生を睨んでいるし、浅川は外を眺め、玲菜は挙句の果てに髪をいじり始めた。

俺は、まるで第三者のようにその情景を見ていた。


「やってない。俺はこの時間は弱いんだ」


桜に反省という字はない、と俺はこの数カ月で思った。

今まで何度こんな場面に遭遇しただろう。

しかし、お前は反省しない奴だな、と言うと、頼朝こそ反省しないで怒られるようなことを続けているじゃないか、と言われ納得している自分もいた。


「そう言うのを世間一般では何て言うか知ってるか?言い訳って言うんだ。しかも、桜はこないだの小テストの名前欄に桜って書いただろ。0点にしてやる」


桜は自分を佐倉圭一と名乗ることをひどく嫌がった。

そのため、テストや小テストの度に、担任の新米教師に名前を書かせていたのである。

俺が書こうか、と言ったこともあるが桜は、自分の勝手な言い分で頼朝に迷惑はかけられない、と言ったのだ。

意外と桜は考えているのだな、と初めてその時思った。