係の仕事は順調過ぎるくらいうまく進み、予定より1時間も早く終わった。

時間を持て余しているのは、お互いどうやら同じのようで、結局二人で話すことにした。


「最近、野球部はどう?」


「ああ。周りの奴らは皆、この暑さにやられてるよ。
すぐに倒れて、練習どころじゃないな」

「桜はどうせ、涼しい顔してるんでしょ」


顔に出ないから分かりにくいが、私はこう見えて暑さが苦手だ。

肌にまとわりつく汗の不快感と言ったら、もう最悪である。


それとは反対に、汗1つかかない桜は、まるで1人だけ別世界にいるのかと疑ってしまくらい、涼しい顔だ。


「まあ、俺は暑さには強いからな。
ほら、あっちはこんな暑さ目じゃないから」


「あー、なるほど」

そうか、未来は地球温暖化がより進んでいるのか。

そりゃあ確かに、耐えられるわけだ。


「そういえば、桜にはおばあちゃんいるんだよね?」

「そうか、百合には1度話したことがあったな」


桜は頬を緩め、恥ずかしそうに自分の指を見つめた。

いや、正しくは、照れくさそうに、だろうか。


「俺はさ、ほとんど両親には怒られたことなかった。
いや、怒られる要素は山ほどあった。
それこそ、一生怒られてても足りないんじゃないかってくらいにな」


自分の話をするときの桜の顔は、興奮しているのか、いつもより表情がさまざまだった。