何も言えずに、じっと大野さんを見つめた。


「好きなんでしょう?」

少し間を空け、息を整えて、言った。


「好きだったんです」

大野さんは首をかしげ、そうかなーと玲奈のような、間延びした言葉を発した。


「百合ちゃん。
貴女らしくない」


「・・・・・・私らしくない、って何ですか」

自分を抑え切れなくなっているのは、充分にわかった。


だけど、それを止めることができない。



「百合ちゃん」と反抗する私を抑える強い声を、大野さんは出した。


一瞬体がビクンと跳ね上がってしまった。




「誰かを全てにしちゃいけないよ。
どんなに誰かを愛しても、自分の意志を曲げちゃいけない。
心配させたくない、なんて信頼されてたら、言わないよ」


胸を刺された気がした。


そっか、私は自分の意志を曲げちゃってたのか、と思い知る。

何かを間違えっていたんだ、気づかぬ間に。



いきなり変えることは難しいかもしれない。


だけど、少なくとも、きっかけはできた。

たぶん、もう、自分の気持ちには、嘘をつかないだろう。



私は、桜が好きだ。