玲奈からの伝言で、私はまたも数学準備室に呼び出された。

全く、今は暇じゃないのだ。


新チームになって、夏季大会もある。

大野さんは一応気を使って、呼び出す回数は減っているが、拘束時間は確実に増えている。


結局は、同じか。


まあ、忙しいといっても、私は完全指導なわけだから、いなくてもいいと言ってしまえば、いなくてもいいのだ。


「で」


「で、って何よ~。
百合ちゃんったら」

いつにもまして、二人のときはテンションが高い。


「いやいや。
用件ですよ、逸らさないで下さい」


「・・・・・・うふっ」


気色悪い、と素直に思った。

気味が悪いほどに明るい。


いつもの地味で目立たない、さん付けの似合う、大野さんでいてほしい。


「もしかして、ないんですか」


「さすが、百合ちゃん」


「本当に、ないんですか」

まさか、そんなことが有り得るのか。


呼び出しておいて、用件がないなんて。

私としては、少々許せない。



「ないってわけじゃ、ないの。
報告に近いかな」


「報告、ですか」