「そんなこと、自分で言えばいいじゃん」


あたしは、てっきりもっと二人に関わることだと思ったのに。

予想を反して、完全なる事務的内容だ。


「百合は・・・・・・」


桜が珍しく小さくて、聞きづらい声で言った。

少し怒り気味に聞きなおすと、桜は視線を窓にやった。



「百合は、期待するだろう?
俺から話しかければ、百合はまた期待して、傷つく。
それが、嫌なんだ」


そこまで思っていて・・・・・・どうして、桜は川さんの思いに見て見ぬふりをするのだろう。


「期待を裏切らなきゃ、いいんじゃないの?」


自分の言ってることは、もっともだと思った。

桜でも言い返せないと思った。


だけど、桜はより一層哀しい顔をして、あたしを見た。



「俺は、いつか皆を裏切る。
百合も・・・・・・スー、お前のこともだ。
そんな俺に、一体何ができる?」


返答できないあたしを横目に、桜はいつもの早歩きで歩いて行った。



桜、あなたは何を抱えてるの?


教えてよ、お願いだから。

あたしは、知りたい。


苦しみも悲しみも、すべて。

それを取り除くことは、無理かもしれないけど、それでも何もしないよりはマシじゃないかな。




いつも大事なことばかり、隠して逸らして・・・・・・君は一人で傷つくの?