それにしても、と教室に向かいながら思った。


川さんと桜が、せめて仲直りしてくれれば。

付き合うなんて、高望みはしない。


だから、今までのように、2人が笑ってほしい。



そう思ってしまうのは、あたしの欲張りだろうか。



と、眉間に皺を寄せながら歩いていると、前方に桜の姿があった。


そのうえ、どうやらあたしを見ている。


勘違いの可能性もあるため、一応後ろを見るが、人影はない。



「・・・・・・スー」


「あ、やっぱ、あたしですか」


「お願いしてもいいか」

桜は、消え入りそうな声で、少しばつの悪そうな顔をした。


「え?あーまあ、聞いてあげてもいいよ」


冗談で上目線で言ったのに、口元すらあげてくれなかった。

そんなに切羽詰まった内容なのか。



「・・・・・・百合に、伝えてほしいことがあるんだ」


「おおっ!告白か~?」


あたしはまたも、勝負に出た。

とにかくやってみる、それがあたしのモットー。


「新米教師が、百合と放課後話したいらしい」


あたしの言葉を完全スルーした桜は、どこか哀しげな顔をしていた。