結局、当り前だけど、私が心のどこかで望んでいた、劇的な展開はなかった。


教室に戻ってからも、相変わらず目も合わせてくれなかった。

帰りも颯爽と部活に向かって行った。


そして、家に帰ってからも、電話とかそういうのを待ったけど、来る気配さえもなかった。



田上への好意はもちろんある。


だけど、どこか違う気もしてしまう。


分かっている。

これ以上、桜を好きでいても、もう自分を傷つけるだけだと。



“幸せになれよ、少しは”



そんな源の言葉が、頭の中によみがえる。


普通の人を好きになって、例えその人が私にとって二番目の人だったとしても、それでもいいの?


一番好きな人を、好きじゃなくなっても、それは恋愛のルールに違反してないだろうか。



そんなことを考えながら、私は明日の朝練の準備をした。




今日で初恋に、さよならだ。


思いを言葉で告げずに、私の初恋は泡のように消えてしまう。



それはとてつもなく、悲しいことなのに、何故か私の心は案外さっぱりしていた。




次の日私は、初めて自分に嘘をついた。


もう桜のことを思っていない、と。


言葉にすれば踏ん切りがつくと思った。


だけど、そんなこと出来るはずなかった。